牧之原市竜巻被害 被災者を置き去りにしない — 福祉専門チームが戸別訪問

先月5日の台風15号に伴う竜巻により大きな被害が出た静岡県の牧之原市で、高齢者ら福祉的な配慮が必要な人を支える県災害派遣福祉チーム(静岡DWAT)が、被災者宅を回って支援を続けている。今年7月施行の改正災害救助法で、自治体が行う救助の種類に「福祉サービスの提供」が追加されたことを受けた初の試み。公明党の山本彰彦、盛月寿美の両県議、松下さだひろ牧之原市議(市議選予定候補)が支援に同行した。
■公明が「福祉」の視点を反映させた災害救助法改正後、初の試み
「牧之原市から委託を受けて来ました。災害派遣福祉チーム、DWATと申します」。介護福祉士などの資格を持つスタッフ2人が、被害の大きかった牧之原市細江地区の県営住宅各戸を訪問した。
4階に住む辻光子さん(67)は80代の夫と暮らす。台風による強風で居室の窓ガラスが割れ、テーブルなどの家具が吹き飛んだ。「夫は驚きで声も出なかった」。家財の一部が光子さんの胸部に当たり、けがをした。スタッフは、罹災証明書を受け取ったかなどを確認し、「眠れないことはないですか」と健康を気遣い、市の相談窓口も案内した。
DWATの事務局である県社会福祉協議会の担当者によると、市の主な狙いは被災者の実態把握。継続的な見守りや支援が必要な人を見つけた場合、市社会福祉協議会などの関連機関につないでいる。支援に同行した公明県・市議らは「被災者を誰も置き去りにしないために重要な取り組みだ。効果的に機能するよう最大限応援したい」と語った。
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DWATは都道府県が設置。社会福祉士や介護福祉士、介護支援専門員などで構成する。被災自治体の求めに応じて現地に入り、福祉職の目線で被災者を支援する仕組みだ。東日本大震災を機に誕生し、全国に広がった。
従来の活動場所は避難所が中心だった。しかし、福祉の手が要る高齢者や障がい者ほど、避難所での生活が難しく、在宅避難を強いられるケースが少なくない。そこで、政府は災害救助法を改正し、自宅や車中で生活を送る被災者も支援する法的根拠が生まれた。
災害対応NPO「MFP」の松山文紀代表(県被災者支援連絡会アドバイザー)は同法の改正を高く評価。「これまで福祉チームの位置付けは低く見られがちだった。災害関連死が問題視される中で、法的な裏付けができ、戸別訪問などができるようになった。非常に大きな一歩だ」と述べる。
防災立国の構築をめざす公明党は、能登半島地震で災害関連死が直接死を上回ったことを重視し、災害関連法制に「福祉」の視点を取り入れることを一貫して推進してきた。昨年3月の参院予算委員会では山本香苗氏(当時、参院議員)が、災害救助法に福祉的支援を盛り込むことを要請。DWATを「避難所外でも十分な活動ができるようにすべきだ」と訴えていた。